化学繊維
●化学繊維は天然繊維に対して用いられる言葉で、原料や製造法により、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維に分類されます。
●化学繊維は高価な絹の代用品として開発され、天然繊維の代わりとなるものを気候などの自然環境に依存することなく、安価に大量に作ることから始まりました。
●現在では天然繊維の代わりとしてというよりも、化学繊維独自の美しさや性能により、衣料、インテリアのほか、自動車、農業、土木など様々な産業分野で使われています。
●このうち、ポリエステル、ナイロン、アクリルが3大合成繊維といわれ、生産量が多く、衣料用に大量に使われており、ポリウレタンは弾性糸としての特徴を生かし量的には少ないものの、様々な衣料品に使われています。オレフィン系繊維やポリ塩化ビニル系繊維、ビニロンなどは、ロープ、ベルト、シートなど、主に産業用資材として使われています。
●様々な機能性繊維、高強度・高弾性率繊維が開発されており、無機繊維にはガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維などや、繊維強化プラスチック(FRP)などの複合材料や断熱材として産業用資材に利用されています。
●化学繊維は世界中で約2100万トン生産され、全繊維生産量の半分を占めるようになりました。その50%以上がポリエステル、約20%がナイロン、約10%強がアクリル、レーヨンは8%程度です。ナイロン、アクリルの生産量は1990年以降ほぼ横這いですが、ポリエステルの生産量は増え続けています。
●日本国内ではポリエステルに続きアクリル、レーヨン、ナイロンの順で多く生産されています。天然繊維は主に衣料、インテリアに使われているのに対し、化学繊維は衣料、インテリアのほか、約50%が産業用に使われています。
●1970年代以降の素材開発は、アラミド繊維、炭素繊維など高強度、高弾性率繊維や中空糸膜、光ファイバーなどの機能性繊維が産業資材分野で大きく進展しました。これらの高性能繊維はその特徴を生かして、宇宙・航空、建設・土木、通信、医療、スポーツ・レジャーなどの様々な分野で用途開発され、ハイテク素材として注目されています。
●化学繊維は次のように分類され次のような指定用語を使用して表示します。
分類 | 定義 | 名称 |
ビスコース繊維 | 平均重合度が450以上のもの | |
その他のもの |
レーヨン
RAYON |
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銅アンモニア繊維 | ||
アセテート繊維 | 水酸基の92%以上が酢酸化されているもの | |
その他のもの |
アセテート
ACETATE |
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プロミックス繊維 | ||
ナイロン繊維(脂肪族ポリアミド繊維) |
ナイロン
NYLON |
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アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維) |
アラミド
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ビニロン繊維 | ||
ポリ塩化ビニリデン系合成繊維 |
ビニリデン
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ポリ塩化ビニル系合成繊維 |
ポリ塩化ビニル
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ポリエステル系合成繊維 |
ポリエステル
POLYESTER |
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ポリアクリロニトリル系合成繊維 | アクリロニトリルの質量割合が85%以上のもの | |
その他のもの |
アクリル系
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ポリエチレン系合成繊維 |
ポリエチレン
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ポリプロピレン系合成繊維 |
ポリプロピレン
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ポリウレタン系合成繊維 | ||
ポリクラール繊維 |
ポリクラール
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指定用語 | |
繊維の名称 | JlSの定義 |
レーヨン | ビスコース法によって製造されたセルロ‐ス繊維 |
ポリノジック | 平均重合度450以上の結晶化度が高いレーヨンの一般名称 |
キュプラ | 銅アンモニア法で製造されたセルロース繊維 |
アセテート | 水酸基の74%以上92%未満が酢酸化されている酢酸セルロース繊維 ただし、この場合エステル化度は2.22以上で2.76未満であること |
トリアセテート | 水酸基の92%以上が酢酸化されている酢酸セルロース繊維 ただし、この場合エステル化度は2.76から3.00の間にあること |
ビニロン | ビニルアルコール単位を、質量割合で65%以上含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ポリ塩化ビニル | 塩化ビニル単位を主成分として形成された直鎖状合成高分子からなる繊維 |
アクリル | アクリロニトリル基の繰返し単位が、質量割合で85%以上含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
アクリル系 | アクリロニトリル基の繰返し単位が、質量割合で35%以上85%未満含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ナイロン | 繰返しているアミド結合の85%以上が、脂肪族または環状脂肪族単位と結合している直鎖状合成高分子からなる繊維 |
アラミド | 2個のベンゼン環に直接結合しているアミドまたはイミド結合が質量割合で85%以上で、イミド結合がある場合は、その数がアミド結合の数を越えない直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ポリエステル | テレフタル酸と2価のアルコ‐ルとのエステル単位を、質量割合で85%以上含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ポリエチレン | 置換基のない飽和脂肪族炭化水素からなる繊維 |
ポリプロピレン | 2個当たり1個の炭素原子に、メチル基が付いた側鎖がある飽和脂肪族炭化水素からできた高分子で、立体規則性があり、他に置換基のない直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ポリウレタン | ポリウレタンセグメントを質量割合で85%以上含み、張力をかけない時の3倍に伸長した時、張力を除くと直ぐさま元の長さに戻る直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ビニリデン | 塩化ビニリデン単位を主成分として形成された直鎖状合成高分子からなる繊維 |
プロミックス | 蛋白質を質量割合で30%以上60%未満含み、その他の単位としてビニルアルコール単位を含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
ポリクラール | 塩化ビニル単位を質量割合で35%以上65%未満含み、その他として主としてビニルアルコール単位を含む直鎖状合成高分子からなる繊維 |
炭素繊維 | アクリル繊維などを高温で熱処理し、炭素化した繊維 |
ガラス | 溶融ガラスを延伸して得られるテキスタイル形状の繊維 |
金属繊維 | 金属から造った繊維 |