テンセル

テンセルの歴史 / テンセルの特徴 / 利用用途 / 呼び方(デニール) / 製造方法 / 染色に関する事項

テンセルの歴史

テンセルはイギリスの総合メーカー・コートルズ社が開発した世界で初めての溶剤紡糸による精製セルロース繊維です。日本では1992年に原綿を輸入し、衣料品の開発が行われました。

テンセルはコートルズ社の商標名です。また、オーストリアでも同じ精製セルロースがあり、これはリヨセル(商標名)となっています。

テンセルは溶剤で溶かしたものを紡糸するため、化学繊維かなと思われますが化学繊維は化学反応により化合物を作り、繊維素や合成した高分子を紡糸しています。

しかしテンセルは木材パルプを溶剤に溶かしてフィルターでろ過した後、不純物を取り除いてから細かい孔から押し出して紡糸します。これは天然繊維素分子をそのまま生かしているため、天然繊維の中の精製セルロースという範囲でうたわれています。

テンセルは乾燥強度が約0.6GPaと高く、乾湿強度比が90%と湿潤時にも強度低下が少ないことが特徴です。これは従来の再生セルロース繊維は化学的に処理され、分子量が低下するのに対し、テンセルは溶剤に溶解したまま紡糸するので分子量の低下が少ないためです。

ビスコースレーヨンに比べ水膨潤度や湿潤伸度が小さいため、湿潤時の寸法安定性が優れていますが、湿潤時にフィブリル化(分繊化)が起こるため、製品化に当たっては、湿潤状態で摩擦しフィブリルを一旦発生させ、酵素処理により除去する方法が行われています。

テンセルは、天然の繊維素分子をそのまま生かしているので、そのまま放っておくと微生物の働きによって分解し、最終的に「土」にもどっていきます。

「リヨセル(商標名)」とは、オーストリアのレンチング社が開発したセルロース繊維です。基本的には、イギリスで誕生した「テンセル」と同じで、溶剤紡糸による精製セルロース繊維です。

リヨセルも、原料から溶剤の選び方まで、環境にやさしいエコロジー素材です。

テンセルは、天然繊椎、再生繊維、半合成繊維のどれにも属さない新しい 「精製セルロース繊維」のため「繊維素系繊維 (指定外) 100パーセント」などと表示することが決められています。

テンセルの特性

丈夫
デニール当りの強度が綿、レーヨンと比べるとはるかに強い

縮みにくく、寸法安定性が高い
テンセル100%織物を洗濯したときの収縮率はわずか3%以内

洗濯性が良い
水を吸収しやすく、吸収した水がすばやく乾く性質を持っている

ソフトな風合い、ドレープ性がよい
生地にハリ、コシ、弾力性、高級感があり、上品な光沢を持っている

染色性が高い
すぐれた染色性を持っている

漂白加工が出来る
綿でしか出来なかったインディゴ染料によるロープ染色(たて糸染色方法)が出来る。

利用用途

当初はデニムパンツやダンガリーシャツなどインジゴ染め製品から商品化されました。

テンセルは、エレガントなドレスをはじめ、カジュアルジーンズ、ホームテキスタイル、ユニフォーム、寝具、セーターなど幅広く使用されています。

今ではジャケット、スーツのほか、ニット製品などにも用いられています。

呼び方(デニール)

テンセル(フィラメント糸)は0.05gで長さが450メートルあるものを1デニールとする。

デニールは、テンセルのほか、化合繊フィラメント(合成繊維全般)で使用されている。

フィラメント糸の定義として、連続した長い繊維(フィラメント)からなる糸で、太さが均一、毛羽立ちが少なく、平滑で光沢があり、ふくらみが少なく、冷たい感触となっている。

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製造方法

テンセル

従来の再生セルロース繊維は紡糸、再生工程で排出されるガスや排水の回収処理に多大なコストがかかりますが、精製セルロース繊維のテンセルやリヨセルは、木質パルプをN一メルモルフォリンーN-オキシド(NMMO)に溶解し、ろ過して不純物を除いた後に紡糸します。

あとは不純物をとりのぞき、そのまま細かい孔から押し出して、紡糸(糸状にすること)するだけです。

使用された溶剤のNMMOは100%回収され、循環利用されるため、無公害のプロセスといわれています。

リヨセル

木質パルプを原料にして、天然セルロースの分子構造を分解させずに、人体に無害なアミン酸化物溶剤に溶かして、ノズル(細い孔の先)から原糸を紡ぎ出します。

染色に関する事項

セルロース系再生繊維のテンセルはいずれも、綿と同様に染色することができますが、綿に比べ非晶領域が多いので、染色性は良好ですが、染色液中での膨潤が大きいため、毛羽立ちや伸び、しわの発生に注意を要します。

一般に用いられる染料

  • 反応性
  • 直接
  • バット
  • ナフトール
  • 硫化
  • 媒染
  • 塩基性
  • 顔料