ビニロン

ビニロンの歴史 / ビニロンの特徴 / 利用用途 / 呼び方(デニール) / 製造方法 / 染色に関する事項

ビニロンの歴史

ビニロンは1939年京都大学の博士がポリビニルアルコール(ポバール)を原料にした合成繊維を作ることに成功し、1950年から日本で工業生産されるようになり”ビニロン”と命名されました。 ビニロンは産業分野で使用されることが多く、生産量の80%が産業用資材分野で利用されております。

女性用の肌着でお湯をかけるとバラバラになってしまうものがありますが、これは水溶性ビニロンで繊維同士をつないでおり、60℃以上のお湯をかけると水溶性ビニロンが解けてしまうため、バラバラになります。汗などの水分で分解しないようにビニロンが解ける温度設定を高くしてあります。

このほか、野菜などを栽培するときの被覆材として防寒、防霜、防風、防虫などに使用する目の粗い織物(寒冷紗)もビニロン製です。
衣料用としては、作業服の分野がメインです。とくに、耐熱性のあるビニロンに難燃性加工を施したものは、燃焼時の溶液落下物(メルトドリップ)がないので、安全作業服や消防用出動服などに使用されています。

ビニロンの特性

摩擦に強い
   綿やウールの3倍以上の摩擦抵抗力があります。

耐光性に優れている  

吸湿性はないが、水分を含む
常時3~5%の水分を持ち、温度が上がると12%まで水を吸収する。

繊維自体の抵抗力が強い
油類、カビ、虫、細菌などに影響されず、耐薬品性がよい。

軽い
比重が1.26~1.3でレーヨン、アセテート、ウール、綿などより軽い。

利用用途

衣料用としては、作業服や学生服に使われていましたが、湿熱寸法安定性や染色性などに問題があり、現在では主に高強度、低伸度、高弾性を生かしてロープ、ホース、工業用ベルトなどの産業用資材として使われています。

水産分野では、親水性、吸水性が必要とされる海苔やわかめなどの藻類繁殖に使われています。

農業資材としては、高い熱吸収、熱板射性、親水性から寒冷紗に、軽量で耐候性がよいので、防虫防鳥用の果樹ネットに使われています。

また、特殊なものとしては育苗移植用のペーパーポットが親水性ビニロンとパルプからできており、育苗中は形態を保持し、移植後は土中で分解されます。土木建設分野では、高強力ビニロンがコンクリート補強材として注目されています。

呼び方(デニール)

ビニロン(フィラメント糸)は0.05gで長さが450メートルあるものを1デニールとする。

デニールは、ビニロンのほか、化合繊フィラメント(合成繊維全般)で使用されている。

フィラメント糸の定義として、連続した長い繊維(フィラメント)からなる糸で、太さが均一、毛羽立ちが少なく、平滑で光沢があり、ふくらみが少なく、冷たい感触となっている。

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製造方法

ビニロンの製造方法は、ポリ酢酸ビニルをアルカリでケン化してポリビニルアルコール(PVA)とし、その水溶液を湿式又は乾式紡糸をして繊維にします。

紡糸しただけのPVA繊維は水に可溶なので、手術用縫合糸やケミカルレースの基布などの特殊な用途を除いて実用性に乏しいため、熱処理やホルムアルデヒドでアセタール化することにより、耐熱性、耐水性を向上させたものがビニロンです。

染色に関する事項

染色法は直接染料、硫化染料、ナフトール染料及び金属錯塩染料を用いることができ、疎水性部には分散染料も染着します。表面のスキン層が染まりにくいため、いずれの染料でも、染着量の割りには濃くみえません。

一般に用いられる染料

  • バット
  • ナフトール
  • 硫化バット
  • 金属錯塩
  • 直接
  • 顔料