アセテート

アセテートの歴史 / アセテートの特徴 / 利用用途 / 呼び方(デニール) / 製造方法 / 染色に関する事項

アセテートの歴史

アセテートは、第一次世界大戦後のイギリス・セラニーズ社によって生産が始まり、日本では1950年から工業生産されるようになりましたが、今日の日本国内のアセテート生産量はさほど多くはありませんが、アメリカでは衣料品として大量に使用されています。

アセテートは高純度木材パルプを酢酸化した酢酸セルロースを使用した半合成繊維です。

パルプのセルロース(植物繊維素)を使用しますが「再生繊維」の部分なので、半分だけ合成という意味から「半合成繊維」と呼ばれます。

アセテートとトリアセテートの違いは、酢酸セルロースの酢酸化度の違いにより名前が違いからであり、トリアセテートはアセテートにくらべて、酢酸の度合いが大きいので、その性質は合成繊維に近いといえます。

アセテートの特性

水酸基の74%以上、92%未満がアセチル化されている酢酸セルロース(エステル化度2.22以上2.76未満)をアセテート、水酸基の92%以上がアセチル化されている酢酸セルロース(エステル化度が2.76~3)をトリアセテートと呼びます。

パルプを原料とする点ではレーヨンと同じですが、酢酸を化学的に結合させて(アセチル化)、親水性の水酸基が疎水性のアセチル基で置き換えられるため、水に対する親和性が低下します。

水に濡れても、レーヨンほど強度低下が大きくありません。適度な吸湿性、保温性、弾力性があり、合成繊維のように熱可塑性であるため、熱によるプリーツ加工ができるので、合成繊維とレーヨンの性質を併せもっているといえます。

アセテート
トリアセテート
  • 天然繊維のナチュラルな感性と合成繊維の機能性の両方のよさがある。
  • シルキーな光沢性がある。
  • 弾力性がよく、比重も軽い。
  • 染色性がよく、深みのあるシックな色相を出せる。
  • 吸湿性がよく、乾燥性が早い。
  • 静電気が帯電しないため、ほこりやチリが付着しにくい。
  • 親水性と疎水性の両方を持ち合わせているため、汚れにくく、汚れても落ちやすい。
  • 優雅な光沢としなやかさがある。
  • 清涼感のある製品が出来る。
  • ウールに近い弾性と比重り、ハリ、コシがある。
  • ドレープ性に優れている。
  • アセテートより合成繊維に近い。

利用用途

高級シルキー繊維として利用されます。

トリアセテート中空糸膜は人工透析膜や逆浸透膜として利用されています。

アセテートステープルはタバコフィルターとして多量に使われています。

呼び方(デニール)

アセテート(フィラメント糸)は0.05gで長さが450メートルあるものを1デニールとする。

デニールは、アセテートのほか、化合繊フィラメント(合成繊維全般)で使用されている。

フィラメント糸の定義として、連続した長い繊維(フィラメント)からなる糸で、太さが均一、毛羽立ちが少なく、平滑で光沢があり、ふくらみが少なく、冷たい感触となっている。

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製造方法

リンタパルプなどの高純度セルロースを無水酢酸、酢酸、硫酸と反応させると、グルコース残基の3個のアルコール性水酸基がアセチル化され、セルロース・トリアセテートになります。

これを加水分解したあと、精製・乾燥するとアセテート・フレークになるので、これをアセトンに溶解して、細い孔から空気中に押し出し、アセトンを蒸発させ、繊維を凝固するのです。この方法を「乾式紡糸法」といいます。

トリアセテートを酸で部分的に加水分解して、置換基数が2.22~2.76のジアセテートにしたものを、酸を除去した後、アセトンを溶媒にして、乾式紡糸によりアセテート繊維にします。

染色に関する事項

アセテート繊維はトリアセテート繊維に比べ親水性なので、染色性に優れていますが、耐熱性ではトリアセテートが勝っています。

アセテート、トリアセテートともアセチル化により疎水化され、セルロース繊維用の染料では染まらないので、分散染料で染色されます。アセテートは950℃以上では著しく収縮するため、染色温度は850℃以下にする必要があります。また、乾燥時の強力が低く、アセトン、シンナーなどの溶剤に溶けることが欠点です。

一般に用いられる染料

  • 反応性
  • 直接
  • バット
  • ナフトール
  • 硫化
  • 媒染
  • 塩基性
  • 顔料