植物繊維


植物繊維は私たちの日常生活を送る上で多く使用されている綿と麻が一般的となっております。綿は肌触りがよく、吸水性のある素材として親しまれています。また、麻は清涼感のある夏向きの素材として知られています。

この綿と麻は、天然の高分子であるセルロースから成り立っている繊維です。セルロースは糖の一種であるD-グルコースが互いに結合し、分子量の大きな多糖類として長鎖状高分子に成長したものです。

なぜ同じセルロースで構成されているのに綿や麻のように特徴が異なる繊維ができるのでしょうか。もともとセルロースは特殊な植物を除きほとんどすべての植物と一部の細菌や動物に分布しているのですが、長い歴史の中で利用できる天然繊維として綿や麻などが活用されてきたものです。

綿繊維は綿の種子が成長して得られる繊維です。一方、麻は種類によって利用できる箇所が異なり、茎の下部組織を利用する種類(じん皮繊維)と葉の葉脈などから得る種類に分けることができます。

綿毛は98%、亜麻及びちょ麻では60~75%のセルロース分を含んでいるといわれており、起源が異なることで繊維を構成している組織や構造的にも異なったものとなっています。

綿のセルロースは、平均重合度(高分子を構成する単分子の平均の重合数又は繰返し数)は1次壁が2000~5000及び2次壁が13000~14000、麻(じん皮繊維)のセルロースは平均重合度は9550となっており、微細な箇所において結晶の部分と結晶でない部分(それぞれ結晶領域及び非晶領域という)の比率などに違いが現れてきます。

綿のセルロースの場合、結晶領域は40~50分子から成るミクロフィブリルから成っています。ミクロフィブリルとは繊維分子(セルロースなどの高分子)が集まって基本となる単位を形成したもので、ミクロフィブリルが集合してフィブリルと呼ばれるものができ、フィブリルが集合して一本の繊維ができているのです。フィブリルを構成するミクロフィブリル同士は弱い相互作用で結び付いており、外部からの力が加わると裂けることもあります。

このミクロフィブリルーフィブリルという構造形式は綿だけでなく、天然繊維共通のものとなっていることがわかっています。また、綿繊維のミクロフィブリル、フィブリルは斜め(約300)に走っているのに対し、麻ではフィブリルはまっすぐになっています。

このようなことから性質が異なったものになってきます。マクロ的にみると、綿には天然のよりがあることも加わって弾力性があり柔らかく、肌触りがよいという性質をもっていますが、麻は太くて硬く弾力性が小さい繊維となっています。

衣料用植物繊維の種類

繊維名 長  所 短  所
綿 丈夫、吸湿性が良い、熱に強い、染色、洗濯性が良い。 しわになりやすい。収縮しやすい。
強い、吸湿性光沢に富む。シャリ感、涼感がある。 硬く弾性に乏しい。しわになりやすい。均一に染めにくい。